【イベントレポート】「日本のものづくりを変える!事業会社がスタートアップとの共創で生み出すイノベーションとは」を開催しました
2022年9月6日(火)16:00~18:00にて、NPO法人生態会との共催で、スタートアップ企業支援・事業会社との共創を目的としたセミナー、「日本のものづくりを変える!事業会社がスタートアップとの共創で生み出すイノベーションとは」を開催いたしました!
今回はそのイベントレポートをお届けいたします。
イベント概要
本セミナーでは、特別講演に株式会社ソシオラボ 代表取締役 中川郁夫氏をお迎えし、「共創で創る未来~スタートアップエコシステムに必要なもの~」というテーマでご講演をいただきました。また、関西に根付くスタートアップ企業4社にもご登壇いただき、具体的なソリューション・サービスに関する講演も実施しました。
本イベントの開催概要やプログラムについては以下のページからご確認ください。
前置きが長くなりましたが、ここからは当日のセミナーの概要をお届けします!
特別講演:「共創で創る未来~スタートアップエコシステムに必要なもの~」
特別講演では、株式会社ソシオラボ 代表取締役 中川郁夫氏をお迎えし、「共創で創る未来~スタートアップエコシステムに必要なもの~」というテーマでご講演をいただきました。
(台風11号接近に伴う交通機関の遅延・運休により、急遽オンラインでのご講演となりました)
中川氏の講演では、
- デジタル時代の価値共創とは
- デジタル時代を切り開く視点と思考とは
- DXの視点と思考でイノベーティブな価値共創を考える
という、3点の趣旨でDXの本質について解説をいただくとともに、スタートアップ企業に求められる視点についてご紹介をいただきました。
個人的に印象に残ったのは、
デジタルのビジネスを考えるときには、現在を起点にする「課題発見型」ではなく、未来を起点に考える「未来志向」が非常に参考になる。変化を捉える→未来を描く→仕組みを作る、この一連の流れで事業を構築していくことがポイントである。
中でも仕組みを作る部分、いわば戦略立案は3S視点「Scope→Scale→Speed」で分析することができる。デジタル時代に生きるデジタルカンパニーに学ぶ、デジタル時代の戦略と実装のヒントとは、「3Sの視点で戦略と実装を考える」ことに集約されていると考えている。
デジタルとイノベーションの観点で述べると、
1.守りのデジタル化:デジタイゼーション=<作り方>の変革
2.攻めのデジタル化:デジタライゼーション=<売り方>の変革
3.デジタルトランスフォーメーション=<価値>の変革と位置付けられ、DXとは「デジタル時代の変化を前提に提供する価値を変革すること」であるといえる。DX実現のためには先に述べた未来志向が肝になり、現在のビジネスをデジタル化することではなく、ビジネスそのものを創造して将来の競争力を強化することが求められる。
スタートアップに期待されていることは、まさしくビジネスそのものを創造することであり、デジタルの先にどんな意味を見出すか・その先に描くビジョンが大切であると考えている。
という趣旨の言葉でした。DXに関する背景や考え方についての解説も大変わかりやすく、いろいろな気づきが得られる講演でしたが、何より中川氏の情熱に勇気づけられ、背中を押してもらえているように感じられる講演でした。中川様、素晴らしいお話をありがとうございました!
スタートアップ企業講演
今回のセミナーでは、関西に根付くスタートアップ企業4社から、各社のソリューションを紹介いただく機会を設けました。ここでは、当日に登壇いただいた4社の講演(ソリューション)の概要をご紹介します。
目次
製造業の人手不足を解消するスマートグラス「TASKel」のご紹介
(HappyLifeCreators株式会社 代表取締役 牧長 心 氏)
HappyLifeCreators株式会社は、一般的なWebシステムやスマートフォンのアプリ開発をはじめ、VR/AR技術を活用したソリューションも提供している企業です。今回は、自社開発したウェアラブル型作業支援サービス「TASKel」のご紹介をいただきました。
製造業では熟練者不足に加え、紙と目視によるアナログ作業で長時間労働が慢性化しています。また、作業員によって判断基準が統一されておらず、誰でも安全かつ正確に作業を遂行できるよう手順の標準化が急務となっています。
これらの課題を解決するために開発された、作業手順指示と報告書の自動作成機能を搭載したウェアラブル型作業支援システムが「TASKel」です。
なお、このソリューションを活用して作業工程支援・工程管理だけでなく、遠隔作業支援、VRを活用した社員教育も行うことができます。
ぜひ概要を把握いただくとともに、「TASKel」に限らず、製造現場における課題等がありましたらぜひお問い合わせ等いただければと思います。
早押しクイズアプリ「はやべん」のご紹介
(株式会社いま-みらい塾 代表取締役 歌崎 雅弘 氏)
株式会社いま-みらい塾は、塾を卒業する学習塾「いま-みらい塾」、早押しクイズ学習アプリ「はやべん」の運営を行う企業です。今回は、成果に結びつける記憶をつくるアプリ「はやべん」のご紹介をいただきました。
一般的に「学び=理解」と認識されていることが多く、成果を生み出すための行動変革まで結びつかないことが課題でした。そこで学びを顕在意識から潜在意識に落とし込み、「理解→記憶→行動変革→成果」のプロセスを繋ぐ役割を果たすために、記憶の強化を目的とした「はやべん」を開発しました。
正答率だけでなく回答率も併せて計測・数値化することにより、定着度を可視化することができるだけでなく、コンテンツを自由に設定できるため、子どもたちの学習だけでなく資格試験・社内研修などにも応用可能です。
なお、「はやべん」は日本e-Learning大賞に2年連続受賞されており、LINEを使った学習コンテンツLINE Studyにも採用されています。
学習や教育に関する課題があればぜひ、お問い合わせ等いただければと存じます。
最先端の農業技術「植物工場」のご紹介
(スパイスキューブ株式会社 代表取締役 須貝 翼 氏)
スパイスキューブ株式会社は、植物工場の事業化支援、農業装置の設計開発、植物工場野菜の生産流通を支援する企業です。今回は、高品質野菜を安定供給できる「植物工場」をご紹介いただきました。
植物工場とは、水と電気を使用して野菜を作る室内工場です。天候の影響を受けず、また野菜を傷付ける害虫の影響も受けないため、洗わなくても食べられる程に清潔で栄養価が高い野菜を生産することができます。
日本は深刻な少子高齢化問題・農業就労人口の減少・食料自給率の低下等、農業に関わるいくつもの課題を抱えています。加えて日本は四季による天候変動が大きく生産量や生産の質を読みづらいうえ、消費者に届くまでに仲卸や小売店を経由することにより野菜の価格が上がり、相対的に地方農家にとっては薄利である課題も抱えています。
これらの課題を解決するため、仲卸や小売店を介さず飲食店に対して直接販売を行う商流構造を形成することによって「売れる野菜を売れるところに販売する」ことを実現しました。特に都市部の飲食店に対しては、居抜き物件を活用した植物工場を作り限られたスペース内で効率よく高品質野菜を生産し、市場に出回りにくい野菜や業務用サラダパックのような「必要だが価格が高く手間がかかりやすい野菜」を提供することができるようになりました。
植物工場を活用した高品質野菜の生産だけでなく、それらを販売する都市部商圏も確保して確実に行き届かせる仕組みを作っておられる点が非常におもしろいと感じました。そんな須貝社長の夢は、2025年に開催される大阪万博で「植物工場の玄関を作ること」だそうです。
興味・ご関心があればぜひ、お問い合わせいただければと存じます。
口腔内撮影ミラーを活用したオンライン歯科検診「HAKKEN」のご紹介
(株式会社スクリエ 代表取締役/歯科医師 岡本 孝博 氏)
株式会社スクリエは、口腔内をスマホで簡単に撮影できるミラーを活用し、口腔領域のDX推進を行う企業です。今回は、自社で特許をお持ちの口腔内撮影ミラーを活用したオンライン歯科検診「HAKKEN」をご紹介いただきました。
2025年の国民皆歯科検診の導入に向けて、日本政府が本格的に動きだしたニュースが話題になりましたが、実現のためには歯科人材不足の解消が必要であると言われています。また、歯科は他専門科と異なりオンライン診療がほとんど進んでいない課題もあります。
そこで、個人が自宅で自身のスマホを使って口腔内を撮影できるミラーを開発し、撮影したデータを添付しオンライン問診票を記入すれば診察を受けられるサービス「HAKKEN」を開発しました。従来はミラーを使わず直接撮影することによってオンライン診療を行っていましたが、直接撮影できるのは前歯のみで、奥歯を撮影するには撮影の角度が甘かったり、画像の粗さで細かい歯の状態を確認できなかったりする課題があったところを解消しました。
2022年10月1日より労働安全衛生規則の一部が改正され、将来的に酸取扱業者の歯科特殊健診が義務化される可能性もあり、オンライン診療の需要はますます高まっていくとの見通しを立てています。そこでまずは2022年10月より、ミラーの量産化を行う予定で動いております。そしてオンライン歯科検診に関わるAIの精度を上げ、2025年の国民皆検診に合わせて一般化・プラットフォーム化していきたいとお考えです。そして将来の健康リスクをAIで推定し、健康寿命の増進に繋げていくことを目指しています。
興味・ご関心があればぜひ、お問い合わせいただければと存じます。
終わりに
今回、デジタル時代のDXに関する理解を深めていただくとともに、スタートアップ企業の持つアイデアとの出会いを通じて共創するはじめの一歩を踏み出すきっかけを提供させていただければという思いで本セミナーを開催いたしました。まずは本セミナーにご登壇いただいた皆様と開催にあたって共催を頂いたNPO法人生態会の皆様に感謝申し上げます。
当財団では引き続き、こういった具体的なソリューションを紹介するセミナーやDX関連の事例紹介等の事業を通して、DXに取り組む、そしてこれから取り組もうとされている企業の皆様のお力になれればと考えておりますので、引き続き当財団事業へのご理解・ご協力をお願い申し上げます。
参考情報
HappyLifeCreators株式会社
https://www.happylifecreators.com/company/
株式会社いまみらい塾
スパイスキューブ株式会社
株式会社スクリエ