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社内外のありとあらゆる業務をシステム化し、働きやすい環境を創出【ビーズ株式会社】

ビーズ株式会社はもともと問屋業だったが、EC市場が急拡大した2000年代初めにECサイトを立ちあげ、B to Cの事業へも乗り出した。やがて自社で商品を企画開発して販売するようになり、今ではアウトドアやゲームなど5つのブランドを展開するメーカーに成長している。
「当社はメーカーですがIT化に力を入れている会社です。当社のコーポレートスローガンである『アイデアをカタチにする』を実現するには商品企画部門だけでなく、全社員が知的生産活動に集中できる環境が大事になります」と大上響代表取締役は語る。問屋業の時代は会計ソフトを使うだけのアナログ企業だったが、メーカー機能が高まるにつれ一気にIT化を促進。今では業務効率の向上や働き方改革を進めるためには、何でもITを活用する、DX推進企業になっている。
 今回は大上社長に、DXを活用した企業運営などについても伺った。

商品の企画開発を加速させたのはECサイトの立ち上げから

御社の事業の概要を教えてください。

現在は5つの自社ブランドを展開しています。もともとは問屋業で、販売先も一般小売店や卸店です。2000年代初め、EC市場が急拡大して、ECサイトを立ちあげたのを機に当社も業態を大きく変え、ECにマッチする商材を中心に広げていった結果が、今の自社ブランドです。

具体的にはいつ頃から商品企画を本格化されたのですか?

2002年頃です。商品をECサイトで販売したらびっくりするくらいに売れたんです。当時はECサイトそのものがまだ珍しい時代。だからアップするものはみんな売れるという状況でした。

店舗販売とECサイトでは売れる商品が違ってくることもわかりました。現在は「インスタ映え」という言葉が一般的になりましたが、その当時、ECサイトの画面で「サムネイル映え」する商品がよく売れました。画像だけで購買してもいいと思える商材がECサイトには適しているということです。もうひとつは物流の都合で小さい商品が効率的。だから大きくても折りたたむとコンパクトになるもの。そういった商品を中心に手がけてきました。 売れだすと、他社の商品だけでなく自分たちでも作ろうじゃないかという流れになりました。オリジナルの商品を海外の工場で作って、ブランド化して販売するようになったのです。すると面白いことに一般の消費者以外の企業からの問い合わせが増えてきました。当時、引き合いが一番多かったのが電子ダーツです。その頃からですね、B to Bの売上がどんどん増えてきたのは。その流れで一気にメーカーとしてのポジションにシフトしました。

そして、超アナログ企業からITを活用する企業へと大きくシフト

昔からITの導入には積極的でしたか?

もともとは超アナログ企業でした。システムといえば、会計ソフトを使っていたぐらいです。それがECサイトを始めた頃から、IT化は避けて通れないと思うようになりました。 それからエンジニアを採用して、ECサイトの構築や物流の仕組みを開発してIT化してきました。その後、IT化はどんどん進み、現在では会計の業務以外はほとんど自社で開発したシステムを使っています。

かつてのITは効率をあげることが目的でしたが、DXはそれにとどまらず業務を革新することが目的です。DXについてはいつ頃から重要視されるようになりましたか?

私自身は以前から業務の革新を意識してIT化を進めてきました。しかし、一般の社員のDXの意識はそう高いとはいえません。とりわけアウトドアはデジタルとはまったく正反対の世界ですし(笑)。ただ、社内の様々な業務をシステム化していっているので、意識は少しずつ上がっているのかなと思っています。

いずれにしても、私自身はすべての業務をシステム化していきたいと思っています。これまでも人事評価や商品開発のワークフロー、新商品のためのアイデア投稿から社内の掃除当番までシステム化しています。外に向けても、受発注システムやデジタル名刺、ビジネスコミュニケーションツールなど、システム化できるものは片っ端からシステム化しています。

案件管理システムや名刺のデータ化など、使える仕組みはどんどん公開

成果があがったDXの取り組みを教えてください。

はい、ひとつは案件管理システムです。案件ごとの情報共有や連絡に利用しています。コミュニケーションの手法にはメールやチャット、電話、口頭などがありますが、案件管理システムはメールとチャットの間くらいのものをイメージしてください。案件ごとにチームを立ち上げ、メンバーが参加して意見を出しあったり、情報を共有したりすることで、誰が、いつ、何を言ったか、その案件がどういう状況かなど、メールを使っていたときよりもわかりやすくなりました。

案件管理システムには「To Do」のような仕組みもあって、今日何をしなければならないかも一覧できます。依頼や相談に対して未返信のものとか、やりとりでどっちがボールをもっているのかもわかるようになっているので、それを見て一日の業務を整理することができます。

いいツールですね。いつ頃開発されたのですか?

6~7年前ですね。メールのやり取りには問題があるなとずっと思っていて、じゃあ情報共有をうまくできるツールを作ろうということで始まりました。また、この仕組みがちゃんと機能するようにアップデートできたので、「2bs-CC(トゥービスシーシー)」という名称で外部に公開しています。 外部公開することで、エンジニアの育成にもなりますし、取引先に活用いただくことで取引のIT化が少しでも進めばいいと思っています。将来、新たな事業の柱にしていきたいという考えもあります。無料で利用できますので、みなさんもぜひご利用ください。

名刺のデータ化の取り組みがありますよね。交換した名刺をデータベース化するものですか?

いえ、そうではありません。名刺そのものをデータにしようという試みです。当社はペーパーレス化も促進していますので、名刺は本当に必要なのかという疑問に突き当たりました。紙で交換した名刺をデータ化して保存するのなら、最初からデータでいいのではないかという発想から生まれたものです。 自分のスマートフォンの画面に名刺データを表示して、相手にQRコードで読み込んでもらうことで名刺交換の機能を果たします。相手の名刺データの管理を行えますし、その後、情報の交換や共有も図れる仕組みです。しかも、データの名刺なら肩書きや住所の変更もリアルタイムにアップグレードできます。先ほど紹介した「2bs-CC」にこの仕組みも組み込んでいます。

いまはまだ名刺といえば紙が常識なので、ためらう人はいませんか?

はい、ためらう人は多いですよ。私自身もためらうことはあります。目上の方には失礼にあたるんじゃないかと。名刺は古い固定概念に縛られています。だからそれを変えることに抵抗を覚える人は多いのもわかります。でも、さっきも言いましたが、紙の名刺を交換してもデータに変換して管理・共有することがどんどん定着しています。ということは紙の名刺はいつかなくなると思いますね。

仕事を理論的に分解するようなプログラミング脳みたいなものが必要

ソフトやシステムを作るときは、アウトソーシングするのですか?

いえ、ほぼすべて自社開発です。グループウェアに関していえば、10年ほど市販のものを使っていました。既存のものだから当然ですが、当社にジャストフィットしていませんでした。当社の業務は独特なところがあるので、カスタマイズしたい欲求がありました。私は自分たちでできることは自分たちですべきという考えですので、当社のエンジニアに相談して、自分たちで作ることになったのです。現在ではカレンダーや「To Do」のような機能や日報も、ほぼ全部自社で開発したものです。

自社で開発するようになって何が変わりましたか?

業務の変更があっても、柔軟に対応できるようになりました。しかも、スピーディにアップグレードできるのでストレスがありません。もうひとつの大きなメリットは、経験値を積み重ねられることです。社内SEが自社の仕組みをより深く理解できるようになって、新たなシステムを構築するときに、さらに良いものができるというメリットがあります。

創業当初のITと今のDXとでは求められるスキルは変わってきましたか?

そうですね。一般社員にはITのことをもう少し知ってほしいし、プログラミング的思考を習得してほしいと思います。そのための教育の一環で「お仕事豆知識」といったIT関連の情報を発信したり、正解すれば社内通貨を取得できるIT関連のクイズを毎日出していて、それらもシステム化しています。
一方、エンジニアのほうは、プログラムを組むための理論的思考力が必須である点は、昔も今も変わりません。ただその上で、社内業務のことをきちんと理解することが重要です。業務がわからなければ現場がほしい仕組みができません。
たとえば、貿易管理システムを作る場合、単純にプログラムが組めるだけではなくて、貿易の業務を一通り理解していなければ、現場に役立つ仕組みは構築できませんし、そのためにはコミュニケーション力も必要なってきます。仕事を理論的に分解するようなプログラミング脳がどんどん必要になってきていますね。そのためには、広い領域の知識とスキルが求められます。

IT化すれば成長できるわけではないが、積極的でない企業の今後の成長は難しい

IT関連の人材は思い通りに採用できていますか?

当社の社員は80数名で、そのうちIT関係の社員は10名です。業務をどんどんIT化しているので、正直なところエンジニアは足りていません。増やさなければならないのですが、最近は採用が難しい状況が続いています。5年前とはまったく逆です。

人材が採用できない原因はどこにあるとお考えですか?

需要と供給のバランスの問題でしょうね。ITエンジニアに対する需要は圧倒的に高まっていますが、それに対応する人材は圧倒的に少ないというのが現状です。大手企業は体力があるので、リクルートの青田刈りのように、ITスキルが低くても育てることを前提で採用していきます。だからIT人材がさらにいなくなっているのです。

ただ、学校もIT教育にチカラを入れ始めていますし、ヤフーのように全社員をIT人材にするような取り組みをするところがでてきているので、今後は需要に供給が追いついてくるとは思っています。

もっとも、すでに10名のエンジニアでまわらない状況になりつつありますので、外部でもできそうな部分はアウトソースするか、場合によってはフリーランスの人たちと組んでやっていくことも視野に入れています。

DXを取り入れてもなかなか会社を変えられないという悩みをよく聞きます。トップの考えとDXの推進は大きな関係があるとお考えですか?

私は昔からIT意識が高かったわけではありません。物を売っていく中で、あるいは会社を経営していく中でITやデジタル化の重要性を痛感して勉強してきました。やはりトップの意識は大きいかもしれませんね。会社も国もトップの意識が変わらない限り、変わりようがないものです。台湾や韓国や中国もトップが絶対にデジタル化をやっていくという意識が明確ですよね。だから国民も企業もその社員も動くんだと思います。そして、そういうところがどんどん伸びています。IT化、デジタル化をすれば成長できるとはいいませんが、積極的でない企業の今後の成長は難しいと思いますね。

社員の働く環境を大きく改善したい。DXはその一環

最近、パーパス経営という言葉をよく聞きます。御社のフィロソフィーとDXとはどうつながっていくのかを教えていただけますか?

会社が成長する中で、私の考え方もどんどん変わってきました。当初は私自身が商品を開発して販売してきましたが、電子ダーツとかゲームとかいろいろな商品を生み出せるようになり、若い社員もどんどん入ってくると、社員が自発的に新しい商品を開発するようになってきました。当社の商品が好きで入ってきた社員が、その分野の次の新しい商品を作ってブランドへ成長させています。
現在では、我々上層部は商品開発にタッチしていません。アウトドアの事業部にはアウトドアが好きな人間がどんどん集まっています。ゲームの事業部も同じです。彼ら彼女らの姿を見ていると、好きなことをコツコツと、本当に楽しそうにやっているんです。
決裁権限も各部署に与えています。自分たちで判断して進めることができる、それが重要だと考えています。信用すると相手も応えてくれます。アウトドアやゲームの事業部は自分たちで自立して運営できるカタチになってきました。
仕事は人生のなかで大半の時間を使うので、それが趣味と一致すれば、こんな素晴らしいことはないと考えています。ですので、我々上層部は、社員が意欲的に働ける環境を作ってくことに特化した方がいいのです。毎日が愉しめる環境づくりとそんな仕事を与えていくのが上層部の仕事。当社がDXに積極的な理由もそこにあります。社員の働く環境を少しでも良くしたいからです。

決裁権限を各部署に与えるのは英断だと思います。

事業計画や予算もそうですが、上がってきたものを見て我々はOKというだけで、それについて「ああしろこうしろ」とは一切言いません。人材計画も同じです。自分たちでできる範囲で計画を立てて進めてくださいと。中期計画を社員たちでまとめて、社員たちで事業を展開しているのが現在のビーズです。それで業績があがっているので、こういう方法もあるのかなと思っています。
好きでやり出したことは、何をしても楽しいじゃないですか。自分で考えて、自分で進めていくから大変なことも乗り越えることができる。そして、近くには仲間がいる。経営者としては、任せた以上、社員には口を出さないようにしています。人事についても上からの一方的な決定は一切行いません。話し合いを重ねて決めていくのが当社のやり方です。
ですから我々上層部は社員が働きやすくなる環境をつくることに専念しています。当社の場合、その手段のひとつがDXです。


  • ビーズはもともと問屋業だったが、2000年代初めにECサイトを立ちあげた頃から自社で商品を企画開発して販売するようになり、今ではアウトドアやゲームなど5つのブランドを展開するメーカーに成長している。
  • ECサイトを始めた頃から、IT化を積極的に推進。人事評価や商品開発のワークフロー、新商品のためのアイデア投稿から、プロモーションのための新商品ページの作成、購入いただく前のシミュレーション、ユーザーサポート、コミュニティづくりのためのSNSの活用まで、システム化できるものは片っ端からシステム化している。
  • 代表的なものに案件管理システムがある。案件ごとにチームを立ち上げ、メンバーが参加して意見を出しあったり、情報を共有したりすることで、誰が、いつ、何を言ったか、その案件がどういう状況であるかなどが“見える化”された。
  • ペーパーレス化の一環で開発したのが、名刺のデータ化である。スマートフォン同士で、名刺データを交換するもので、先の案件管理システムとともに「2bs(トゥービス)」という名称で外部に公開している。
  • ほとんどのシステムは自社開発である。カスタマイズができ、業務の変更があっても、柔軟かつスピーディに対応できるからだ。また、社内に経験値を積み重ねられるため、新たなシステムを構築するときに、さらに良いものができる。
  • 一般社員にはITのことをもう少し知ってほしいし、プログラミング的思考を習得してほしい。一方で、エンジニアは社内業務のことをきちんと理解することが重要。業務がわからなければ現場が必要とするシステムが開発できない。
  • DXが進むかどうかは、やはりトップの意識は大きいのではないか。トップの意識が変わった企業は、どんどん伸びていると思う。IT化、デジタル化をすれば成長できるとはいわないが、積極的でない企業の今後の成長は難しい。
  • 現在では同社の上層部は商品開発にタッチしていない。決裁権限も各部署に与えている。毎日が愉しめる環境づくりとそんな仕事を与えていくのが上層部の仕事であり、その手段のひとつがDXである。

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