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ローコードツールの普及で求められるのは、技術力よりも企画力【アイクラフト株式会社】

アイクラフト株式会社は神戸・大阪・東京を主要拠点に、近隣の企業から、情報システム業務の保守運用からシステム基盤の構築、アプリケーションの開発など、IT業務全般を請け負っている。特徴的なのは地域に根ざし、顧客のそばでサービスを提供しようという姿勢を明確に打ち出している点だ。中小企業にとってはIT業務の専門部署を設けることはハードルが高い。いまいる社員で取り組まざるを得ないが、人材には限りがある。専門的な知識や技術も足りない。そんな中小企業をサポートするのが、アイクラフトの使命である。
現在、アイクラフトは自身のDXの取り組みを加速させているところだ。生産性の向上と働き方改革が目的だが、その取り組みの成果をそのままお客様へのサービスにも展開している。
同社代表取締役の山本裕計さんにDXの取り組みや、これからのデジタル化で必要となるスキルや人材像についてお伺いした。

DXは新しい用語だが、そういう業務は創業以来ずっとやってきた

Q:御社の具体的な業務内容についてお聞かせください。

A:神戸三宮、大阪本町界隈、東京秋葉原を拠点に、顧客の会社を訪問して、各種情報システムの運用やトラブル対応、人事異動に伴う権限設定の変更やシステム開発、情報システム部門が行うさまざまな業務を代わりに請け負っています。中小企業が多いので常駐するまでもない業務が主で、連絡が届けば伺って対応するというスタイルです。
パッケージソフトのベンダであればコールセンターでサポートするのに対して、当社の場合、電話で済まなければ、顧客の現場に駆けつけてサポートします。だから、近隣の企業がメインの顧客となっています。

Q:他社のシステムやソフトでもサポートされているのですか?

A:WordやExcelなどのメジャーなソフトはもちろんのこと、見たこともないような業界専用パッケージソフトなどもできる限りのサポートを行っています。ソースコードや仕様書が公開されていればプログラマーがサポートしますし、ソースコードや仕様書がない場合は、お客様に代わって問い合わせたり、お客様といっしょに取り組んだりですね。当社のスキルを活かしてベストエフォート(可能な限りの努力)するようにしています。以前に開発してもらった会社がなくなって困っているという相談は多いですね(笑)。フリーランスの人に作ってもらったんだけどもうやってないとか。こんな案件もベストエフォートするようにしています。

Q:DXに関する相談も増えていますか?

A:DXは最近の用語ですが、業務の電算化やシステム化、IT化など、そういうサービスを創業以来ずっと提供してきました。顧客のITに関する課題をサポートするということでは一貫してきましたので、増えたというより、言葉が変わっただけでずっとやってきたという感じですね。

自社のDXについては社内手続きのオンライン化から着手

Q:IT企業のDX化ってどんな感じなんでしょう。とても興味があります。

A:当社では、いま全社を挙げてDXに取り組んでいます。社員の働き方の変革にもつながりました。業務の効率化にも役立っています。
本格的に取り組むようになったのは2年前からです。きっかけはコロナ禍。リモート勤務にしたいという社員の希望もあり、コロナ禍を機にできるところから取り組んでみようということになりました。
まず始めたのが、社内手続きのオンライン化です。例えば、出退勤の管理はタイムカードからスマートフォンへ変更しました。Slackを使ってプログラムを自作し、スマートフォンで出退勤を押すと、出勤簿のデータベースに記録されるようになっています。他には休日管理ですね。有給休暇の申請と承認、休日出勤や振替休日の申請と承認もSlackで行っています。請求書も同じように、担当者が請求書をあげて、上司がオンラインで確認・承認しています。経費精算はクラウド会計ソフトのfreeeを使っています。

Q:コロナ禍をきっかけにオンライン化を一気に進められた感じですね。

A:そうです。オンラインで運用すれば申請や承認する場所を選ばないので、リモート勤務の推進には欠かせません。あとDXと呼んでいいのかわかりませんが、会議室をひとつ潰して、オンラインミーティング用のブースを3部屋作りました。広い会議室では、誰かがオンラインミーティングに使うとその空間は潰れるじゃないですか。もったいないですよね。それなら電話ボックスみたいな個室に分けようと考えたのです。自席でオンラインミーティングをすれば、まわりがうるさかったり、後ろを誰かが通ったり、気が散ります。逆に、まわりの人の気が散って仕事に集中できなくなる場合もあります。小さなブースだと自分だけなので、ミーティングに集中できますし、まわりの迷惑にもなりません。

Q:それはいいアイデアですね。ところで、リモート勤務は定着しましたか?

A:当社ではコロナ禍以前からリモート勤務も認めていたので、コロナの感染が始まって以降、比率があがっていったという状況です。コロナ禍がどうなるかわかりませんが、これからは業務の内容や社員の希望に応じて選べるようにと考えています。
業務によって出勤した方がいい場合もあるし、必要がない場合もあります。また、仕事は職場でという考えの人もいるし、できれば自宅で済ませたいという人もいます。会社の方から一律どちらかにしなさいとは言わないようにしています。
また、意外に大きな変化は、コロナ禍のおかげでリモート勤務の認知度があがって、私たちがリモート勤務をしていてもお客様が不愉快に思わなくなったことです。打ち合わせを対面でなく、オンラインでしていただくお客様も増えました。

Q:営業の仕方も変わりましたか?

A:はい。従来は営業の基本は対面でしたが、いまは一部をオンライン化しています。展示会でいろんな人と名刺を交換した後に訪問したり、メルマガを送ってゆるくつながりながら、何かお困り事が起きたときに思い出してもらうのが従来のスタイルでしたが、Web集客に切り替えつつあります。それを当社のサービスのうちでもWeb集客しやすいサービスから始めています。当社のサイトにランディングページを作って、広告で集客し、見込み客を獲得したらオンライン商談して、ある程度、話がまとまったところで顧客の現場に出向き、実際のシステムやハードを確認しながら運用保守を開始する。そのような手順になりました。

「ACiX」というプロジェクト組織を立ち上げた3つの目的

Q:仕事の効率は上がりましたか? どんな成果が上がっていますか?

A:国内・海外への出張は確実に減りましたね。また、効率というより、メリットと呼ぶべきですが、私たちが取り組んだDXの成果を顧客にも提供できる点が大きな成果です。
それを促進するために「ACiX(エーシックス、アフター・コロナ・アイクラフト・トランスフォーメーションの略 )」というDXを専門に担当する部署を作りました。2020年7月のことです。各部署から4名の人材を集めて、私の直属の組織にしました。目的は2つあって、社内でのDXの推進と、自社で取り組んできたDXの成果をお客様に提供することです。先ほど申し上げた社内手続きや営業のオンライン化はACiXの手がけた仕事ですし、その成果をACiXが先頭に立ってお客様に提供しています。

Q:ACiXを組織化する上で意識したことは?

A:人ですね。ACiXには当初5名の人材を集めましたが、その5名にはプログラミングのスキル以上に企画力を求めました。最近、当社社員に求められるスキルが変わってきていると感じています。従来のソフト開発はプログラムを組んで、必要なアプリを作って、お客様のニーズに応えるというスキルが求められていました。しかし、現在はいろいろな使いやすいツールがリリースされています。いわゆるローコードツール・ノーコードツールと呼ばれるものです。しかし、実際のところは、使いやすいといわれるこれらのツールがあっても、一般の人が使いこなすにはやはりハードルは高いんですね。習得しようにも本来の業務が忙しい。そこで当社の出番となります。当社がツールを使えばローコストで必要なシステムやソフトを作成することができます。顧客も安く思いどおりのものができるので喜んでくれます。
これらのツールを使うには、高度な技術は必要ありません。それよりも、課題をとらえる力や課題解決の着想や企画力などがより重要になってきました。もちろん、高度な技術が必要な場面もありますが、そのようなときはエンジニアに任せればいい。ACiXの人材に企画力を求めたのは、このような理由からです。

Q:デジタルスキルからプロジェクトスキルということですね。

A:プログラマーはもちろんこれからも必要です。彼らはゼロからオリジナルの仕組みを作り上げることにやり甲斐と誇りを持っています。その一方で、リリースされているツール、例えばKintoneとかSalesforceとかを使って、この業務をデジタル化すればどんなものができあがるのかとか、この課題にはこのツールを使えば効率的に仕上がるとか、そんなアイデアというか、着眼点は、プログラムを書くのとは違うスキルです。おっしゃるとおりプロジェクトスキルといってもいいかもしれません。
今後は従来からのエンジニアだけでなく、プロジェクトスキルの高い人材を集めたいのですが、新卒を採用するにしても学校でそのような教育を行っているわけではありません。となるといっしょに試行錯誤しながらいろいろな気づきのなかで身につけてもらうしかありません。これがACiXを立ち上げた3つ目の目的です。

Q:採用という言葉がでました。御社は新卒採用が多いのですか?

A:新卒と中途採用のどちらがいい人材が採用できるかといえば、確率は五分五分のような気がしています。新卒は即戦力になりませんが、中途採用は採用コストが高いし、自分ができあがっていて、逆に凝り固まっている人が多いのも事実です。それにずっとプログラムを書いてきた人に例えばWebマーケティングの部署へ異動させるのもどうかと思います。それなら確率は五分五分なんだから、新卒の方がいいという立場ですね。毎年5、6名ほど新卒を採用するのですが、半分は従来の専門的なITスキルのある人です。売上的には既存のビジネスが大半を占めている状態ですから。しかし、このままでは必ず頭打ちになります。企画力とかセンスは面接だけではわかりませんが、しっかりした文章を書いているとか、ロジカルに物事を考えて受け答えしているとか、そんな人の中からITにも対応できそうな人を見出して採用するように心がけています。

Q:人事評価面でも変化はありますか?

変えていかなければなりませんね。これまでの指標は売上高やシステム開発にかかった工数でした。しかし、アイデアやセンスなど、これまでと毛色の違うものを同じ物差しで測ると無理が生じます。ITスキルだけではなく、人間力とかビジネスパーソンとしての素養だとか、新しい物事へのチャレンジ精神とか提案力とか、そういうのを数値化する術は当社にはありませんでした。しかし、これから重要になると考え、人事評価制度のコンサルティングを受けて、評価制度を新しくしました。いわゆるKPI(重要業績評価指標)で評価する制度です。チャレンジ精神とか提案力などを数値化して、評価するという手法に切り替えました。

デジタル化、DXの鍵は人。やるべきことを見極めたリーダーがいるかどうか。

Q:多くの企業がDXを進めなければならないと考えていると思いますが、うまく進めるポイントって何だとお考えですか?

A:優れたリーダーの存在ではないでしょうか。特に当社に相談があるのは、DXに取り組むという明確な意志があって、中心となるリーダーがいて、でも社内にふさわしいIT人材がいないというケースがほとんどです。まずはリーダーとなる人の着眼点。この部分をデジタル化すれば効率や生産性があがるとか、ここを解決するとデジタル化が一気に進むといった着眼点です。それを見いだせるリーダーがいるかどうかが大きいと思います。

Q:社内に専門のIT人材がいなくてもリーダーがしっかりしていれば進むと。

A:そうです。アウトソーシングする先はいくらでもあります。当社の場合も、そうしたリーダー自らが、あるいはリーダーが選んだ担当者が、どうにかなりませんかと駆け込んでくることが大半です。目的がはっきりしていると、当社も的確なソリューションを提案できます。

Q:先ほどの人材の話にも共通しますが、どの企業にとっても、課題を発見し、立案して、率いるという能力が重要ということですね。

A:かつてのITは高度な電子計算機のようなもので、速くて効率が良いというだけのものでした。しかし、いまやそれで満足できる時代ではありません。
最近、パーパス経営ってよく言われます。目的を軸にして企業経営を行うとか、30年先の視点から現在を捉えて行動するとか。その点で、いま各社が求められていることは、何かを実現するためにITをどのように使うのかということです。自社の目的を実現するためのITの活用、DXの推進という姿勢が一番肝心なことだと思います。そういった企業のなかで、当社がお役に立てるのはデジタル化がハンディキャプになっている企業です。

Q:デジタル化がハンディキャプになっている企業とは?

A:当社に依頼がある企業は、そこそこの業歴のあるところが多いんですね。去年、一昨年できたような会社はうちのお客様にはあまりなりません。というのも、現在はツールもローコードがベースだし、経理やワークフローのシステムもクラウドサービスがあります。ファイル共有だってMicrosoftとかGoogleとか、さまざまな便利なサービスが揃っています。何が言いたいかといいますと、新しくできた会社は、最初からデジタル化に取り組みやすい環境が整っているということです。
しかし、業歴のある会社はそうではありません。すでに出来上がっているアナログの仕組みを抱えているので、それをデジタルに変革することが強いられています。そこで戸惑いもあるし、技術についていけない部分がでてくる。自分らしさを残しながらも何を取り入れて変革していくべきか。そうした悩みをもつ企業のそばを伴走しながら、ソリューションを提供していくのが、当社のパーパスというか、社会的役割だと考えています。
だからこそ世の中のトレンドとか、スキルとか、ユースケースとかをできるだけたくさん身につけることが大事です。プログラムを書くことも大切ですが、それだけでなくデジタルトレンドを身につけてお客様に提案する。そのためには当社自身も変革しなければならない。変革の成果を提供しないといけないと思っています。

まとめ

  • アイクラフトは近隣の顧客を必要に応じて訪問し、情報システムの運用とかトラブル対応、人事異動に伴う権限設定の変更や、システム開発、情報システム部門が行う様々な業務を請け負う会社である。
  • 同社自身のDXはコロナ過を機に、社内手続きや営業のオンライン化から取り組んだ。その成果を顧客にも提供し、顧客のDX推進に役立てている。ほかに、オンラインミーティングに集中できるよう、専用のブースを設置したりもしている。
  • 自社のDXを推進し、顧客のDX推進をサポートする専任部署として、社長直轄の「ACiX」という部署を発足。ACiXには当初5名の人材を集めたが、その5名にはプログラミングのスキル以上に企画力を求めた。現在は4名体制でDXに取り組んでいる。
  • ローコードツール・ノーコードツールが普及した現在、必要なのは専門的なプログラム言語を扱うスキルだけではなくて、課題をとらえる力や課題解決の着想や企画力などである。つまり、求められるスキルがデジタルスキルからプロジェクトスキルへと比重が移ってきている。
  • 採用は新卒が中心。新卒は即戦力にならないが、中途採用は採用コストが高いし、自分ができあがっていて、逆に凝り固まっている人が多い。新卒がいいか、中途がいいかは五分五分なので、時代の変化への対応を考えて新卒採用を優先している。
  • DXをうまく進められるかどうかのポイントは、優れたリーダーが存在するかどうか。この部分をデジタル化すれば効率や生産性があがるとか、ここを解決するとデジタル化が一気に進むという着眼点を見出せるリーダーがいるかどうかが大きい。
  • 業歴のある会社は、すでに出来上がっているアナログの仕組みをデジタルに変革することが強いられるため、技術についていけない部分がでてくる。そうした企業のそばで伴走しながら、ソリューションを提供していくのが、アイクラフトの社会的役割である。

企業情報

社名アイクラフト株式会社
代表取締役山本 裕計
本社所在地〒650-0034
神戸市中央区京町83番地 三宮センチュリービル13F
設立2001年(平成13年)1月4日
資本金8,000万円
事業内容■IT運用 (iSTAFF, iSTAFF24)
■ソフトウェア開発
■ITインフラ構築
■Bilingual IT Service Solution
■Blockchain技術利用サポート
■オープンソースソフトウェア利用サポート
■データ入力・データ化処理(株式会社アレスクリエイション)
■国際輸送(アイクラフトJPN株式会社)
■ベトナム事業支援(iCRAFT JPN Vienam JSC)
WEBサイトhttps://www.icraft.jp/

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