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究極のミッションは、世の中の問題をロボットで救うこと【株式会社HCI】

株式会社HCIは2002年に創業。インフラに不可欠なケーブルやワイヤーの製造装置メーカーとしてスタートした。2004年には髪の毛より細いケーブルを製造する撚線機(よりせんき)を開発し、特許を取得。極細ケーブルは携帯電話の普及に貢献し、HCIもケーブルやワイヤーの製造装置メーカーとして確かなポジションを確立した。転機は2008年のリーマンショックだった。受注が目に見えて減っていったのだ。同社はこの逆境の時期に、将来の需要増が見込めるロボット市場に参入した。2009年にはロボットシステム第一号を納入。以後、着実に技術とノウハウを身につけ、2017年にはAIの開発にも着手。ロボットシステムインテグレータという地位を確立した。ロボットといえば大手企業のものというイメージがある。中小企業が自在にロボットを活用するには、まだまだ高い壁があるように思う。しかし、人手不足に悩む中小企業にこそロボットは必要だ。 今回はHCIの代表取締役社長である奥山浩司さんに、第一線のロボットシステムインテグレータの地位を確立するまでの軌跡や、中小企業のニーズに応えるロボット戦略についてお伺いした。

リーマンショックがきっかけで、ロボット市場に参入

Q:御社は、元々はケーブルの製造装置メーカーからのスタートですね。それがどうしてロボット事業へ?

ケーブルやワイヤーを製造する装置の開発・製造からスタートしました。各種機器にはたくさんのケーブルが使われています。なかでもテレビ付き携帯電話(ガラケー)は、百本程度の髪の毛より細いケーブルを使用したワイヤーハーネスが使われました。私たちの装置はそれを製造することができ、φ10ミクロンほどのケーブルを製造する装置もあります。21世紀に入って携帯電話は爆発的に普及しましたが、極細ケーブルの製造という点で、私たちは貢献してきたと思っています。

大きな転機は2008年のリーマンショックです。全国の工場が止まりました。当然、ケーブルの需要も減り、注文は目に見えて減少していきました。なにか手を打たなければいけない。そのときロボットが浮かんだのです。

私は子どものころガンダムが大好きで、ロボットを作ることは夢のひとつでした。また、リーマンショックの前から世の中の変化を感じていました。今後はますます人手不足になるであろうし、工場に限らず、医療やサービス、農林水産の分野でも自動化されていくだろう。そのとき少年時代の夢と世の中の流れがリンクしたのです。これからは絶対にロボットが必要になるはずだと。小さい頃から興味のあったロボットを作って、世の中に貢献したいと思うようになりました。

Q:リーマンショックで突然ロボットですか?

突飛とお思いかもしれませんが、リーマンショックのときだからロボットの可能性に確信を持ったともいえます。リーマンショックでモノを製造する工場は止まっていても、生活や飲食関連の領域は動いていました。その分野ではロボットの需要はある。つまり今後、リーマンショックのようなことが起こっても、ロボットの需要はなくならないはずと思ったのです。 それにHCIはもともと機械メーカーです。ロボットも自動化機械。部品をアッセンブリして、電気で制御して動かします。元から素地はあるわけですから、さほど難しいとは思いませんでした。

自分で繰り返し使って、作って、スキルやノウハウを習得

Q:しかし、取り組んでみると、新たな技術やノウハウも必要だったのでは?

私たちになかったのはロボット制御(ティーチング、プログラミング)というスキルです。ロボットはあるタスクを成すために動かさなければなりません。その動きをプログラミングによって教え込む必要があります。このティーチングのスキルは、それまでの私たちにはないものでした。 もうひとつはハンド技術、つまり、モノをつかむ動きですね。つかむ方法には、大きく分けて吸着タイプと把持タイプの2種類がありますが自分達でそのタスクに適したハンドを選定し、自作します。経験がものをいう技術ですね。特に柔軟物は非常に難しい。そんなことを学びました。

Q:独自に勉強されたのですか?

ロボットアームを製造されている大手メーカーさんは多々あり、使われるプログラム言語も様々です。そういった言語をメーカーのセミナーなどで学びました。ロボットを扱うには、安全特別教育を受ける必要もありました。しかし、最終的には、自社にロボットを導入してひたすらプログラミング・ティーチングを行い、使うことで学びノウハウを習得していきました。

2008年当時、ロボット市場に参入するのはハードルが高いと感じる人もいたようですが、先ほども申しあげたとおり、私は必ず作れるという確信がありました。産業ロボットは誕生してすでに50年になります。その間、ユーザーにロボットを完成型のロボットシステムとして納入しているのは、大手ロボットアームメーカーさんではなく、中小企業のロボットシステムインテグレータなのです。従って、同じ中小企業のHCIができないはずはないですよね。

ロボットが必要なのは製造現場だけではない。飲食・サービス分野へ進出

Q:最近は飲食の分野にも進出されていますよね?

はい、2017年よりサービス産業向けロボットの開発を始めました。ロボット市場の動向を経済産業省が資料にまとめています。それによると産業用ロボットアームの市場は1兆円(2021年)を超えています。そしてそれから先には10兆円に成長すると予測されています。その中でも半分を占めるのはサービス産業だと明記されているんです。 人手不足はこれからの大きな課題。それは製造現場だけの話ではありません。サービスや医療、農林水産の現場でも必ず起こります。その中でも、市場が大きいと考えられるサービス分野に貢献するロボットシステムを開発すれば、その分野の人手不足という課題解決に貢献できると考えて、サービス産業への進出を果たしました。

Q:その他にもユニークな活動を展開されていますね。

2018年に泉大津商工会議所の1階と4階に、初心者向けの啓蒙の場である「HCI ROBOT CENTER」を、そして2020年には泉大津駅前の商業施設にロボット・AIの開発・営業拠点「HCI ROBOT・AI LAB」を開設しました。 HCIには現在3つの事業部があります。ひとつはI & R(インダストリアルマシナリー&産業用ロボットシステム)事業部。産業用ロボットとケーブルの製造装置を開発・製造しています。これまでのHCIを支えてきた事業です。

これから伸ばそうとしているのがS & S(サービス用ロボット&ソーシャルシステム)事業部。飲食の現場で活躍する配膳ロボットや、図書館で本があるところを教えたり、案内までするロボットシステムの開発・製造を行ったりしています。そしてF & A(フード&アメニティ)事業部では、ロボットを使ったカフェなどの運営や仕組みを構築して提供しています。

Q:2008年に着手されてから短期間で、非常に幅広く展開されていますね。

創業当初はいなかったIT系のプログラマーを増やしていってS & S事業部を立ち上げ、現在ではスマートファクトリーまで構築し、提供しています。機械装置を製作するとなるとFA(ファクトリー・オートメーション)の世界から、工場でボルトを締めたり、叩いたり、運んだりする技術者が働いているイメージを描くと思いますが、高度なロボット・AI・IoTシステムを構築するにはIT系のプログラマーがプログラミングして、システムを構築しなければなりません。 従来の製造技術とITの両方を自社で手掛けているロボットシステムインテグレーはほとんどありません。しかし、HCIはは両方を備えているからお客さまから信頼を得ているし、より高度なニーズにも応えることができます。いろいろな領域へ進出できるのもその両方があるからだと思います。

システムインテグレータとして、ロボット導入コストを抑制

Q:最近では、AIの開発にも力を入れられているとか。

はい。例えば、ケーブル自動整列巻き取りロボットシステムにAIを活用しています。ケーブル製造には、最後に出荷前の巻き替え工程が不可欠なのですが、これが難しいのです。隙間なくきれいに巻き取らなければならないのに、ケーブルの癖によって思わぬ力が働き、予期せぬ方向にケーブルが寄っていき、巻が乱れてしまう。ですので、これまでは職人の手作業に頼っていました。

それを自動化できるよう、2年をかけて開発しました。ポイントはロボットの制御技術とAIを導入して、職人の動きを具現化させたことです。整列巻きが乱れたら自動的に止まって、戻して、巻き直す。職人と同じように作業します。

このほか自然言語処理を使い、受付やお客様をもてなすAIを開発したり、画像認識や強化学習にも取り組み、AIビジョンを使った検査システムは多くのユーザーに納入させていただいています。新聞やテレビでも多く紹介され、ています。問い合わせが殺到しています。

Q:人手不足に役立ってきた訳ですね。

はい、産業用ロボットシステムは、できるだけ価格を抑えるようユーザーに提案し、納入していますが、それでも1台1千万円、2千万円します。しかし、サービス業、特に飲食店には、価格で折り合わなかった。1台1千万円、2千万円もするロボットを導入できるお店はなかなかありません。ロボットが普及しない理由は価格が大きいです。これをなんとかクリアできないかと考え、以前に2百万円ぐらいで自走型受付用ロボットを提供して、好評だったことを思い出し、同じような価格帯のサービス用配膳・運搬ロボットを販売することにしました。

Q:配膳・運搬用ロボットのコストパフォーマンスは如何ですか?

HCIは、配膳・運搬用ロボット、の販売代理店としてリースで販売する仕組みを整備しました。5年リースの場合、配膳ロボットの時給は約357円。アルバイトを一人採用する費用と比べると毎月12万円ほど安くなる計算になります。そう説明すれば、じゃあ1台導入してみようかと、ロボットへのハードルを下げていただけるようになります。

そして、サイバーフィジカルシステムで社会へ貢献

Q:ロボットシステムインテグレータとして、大手メーカーのロボットを活用したシステムを開発・提供されておられますがロボットも作られていますか?

はい。ロボットを作る技術はあるけれど、自社で製造すると高くなって売れません。だから大手メーカーの大量生産しているロボットアームを使って、ニーズに応えるシステムを構築し、提供しています。あるものは使えばいい、それでコストが下がって導入のハードルが下がるのなら使いこなす技術を駆使するべきと考えています。ただし、ないものは自分たちで作る。5本指ハンドやヒューマノイド(人型ロボット)の開発に挑戦しているのはその一例です。

また、ロボットシステムを開発・提供する際には、事前にサイバーフィジカルシステムでシミュレーションできるのもHCIの大きな特長です。

Q:サイバーフィジカルシステム(CPS)について具体的に教えてください。

まず、世間でよく言われているCPSの1例は、ロボットシステムの導入を考えている現場には様々な設備が設置されており、それに基づいて人やモノの動線がレイアウトされています。これは現実世界であり、言わばフィジカルです。それをそのままサイバー空間上に再現します。このサイバー空間上でロボットシステムを導入してみて、使い勝手や効率などをシミュレーションする仕組みがサイバーフィジカルシステムです。どうすれば使いやすくなるか、何がネックになってるかなどを確認しながら、適切なシステムを組んでいきます。

こうして開発したシステムを実際の現場、つまりフィジカルな世界に導入するわけです。 自分達が考えているCPSは、ITやAIなどサイバーと、工場をはじめとするフィジカルな現場とが連携して、社会的課題を解決する、言わば「Society5.0」なのです。世界的にみるとサイバーはGAFAに先行されてしまいましたが、私達は大いに活用できます。また、フィジカルの分野では日本は優位です。自動車メーカー、特にエンジン技術はトップ。精密な産業用ロボットの技術や生産も日本が1位です。これらサイバーとフィジカルを組み合わせたものを提供すれば、日本も次代の物づくり大国として躍進できるのではないか。私たちはそれに貢献していきたいと考えています。

Q:人が集まらないと困っている中小企業は多いと思います。御社が順調に人を採用できている要因はどこにあるとお考えですか?

社員第一主義であること。そして、「やりたいこと」や「夢」を叶えられる企業であること。それらをHCIが着実に実践していると学生が認識し、自分の「やりたいこと」「夢」がHCIの事業とマッチングしたときにHCIを選んでくれているのではないでしょうか。

発信することは大切です。まだ事業化には至ってはいませんが、ヒューマノイドに挑戦していることを発信すれば、そんなロボットを作りたいという人が集まってくれる。南大阪でスマートシティ化の一助になると発信していますが、HCIならきっとできるだろうと思って入社してくれた社員もいますね。自分の夢と会社の夢が同じ方向を向くことは大切ですね。

Q:ありがとうございます。最後に、着実に成果を上げてこられた大きな要因は何だとお考えですか?

リーマンショックのときは受注が1/3まで減りました。現在、注文は殺到しているのですが、半導体が不足していてモノが十分に作れず、売りが立ちにくい状況です。しかし、そんなときでも次の夢を語り、できることをして実績を重ね、それをきっちりとリリースしています。だから共鳴してくれる企業や人が集まってくれているのだと思っています。

私どもの成長は、どんなに大変な時代であっても、トップがブレずに未来の指針を提示して、みんなが同じベクトルで進んでいるからです。ベクトルを同じにすることは重要です。うまくいっていない企業は社長の考えがブレブレで、社員のベクトルが乱れているのではないでしょうか。 HCIの究極のミッションは世界平和と人類救済。人手不足の問題をロボットやAIを導入して解決し、業績につなげていただくことはその一貫です。世の中の問題をロボットで救えることはまだまだあるはず。HCIの活躍できる場もたくさんあると考えています。

まとめ

  • HCIはケーブルの製造装置メーカーからのスタートし、順調に事業を拡大。しかし、リーマンショックで一転受注が止まり、それを打開するため、奥山社長の子どものころからの夢であったロボット分野に新たに参入した。
  • 設計や組み立てなどロボット製造の素地はあったが、ティーチング・プログラムとハンドのスキルやノウハウはなかったので、ロボットを導入して実際に使ったり、プログラムを書いて動かしてみたり、そんな勉強を繰り返してスキルやノウハウを習得した。
  • 2017年からは、将来確実に需要増が見込まれるサービス分野のロボットを扱えるようにと、サービス業向けロボットの開発を開始。同時に、AIを活用したケーブル自動整列巻き取りロボットシステムを開発。
  • 機械製造技術とITの両方を備えているのがHCIの強み。小規模な企業がロボットを製造するとコスト高になるため、大手メーカーのロボットアームを活用し、ロボットシステムインテグレータとして、ユーザーの現場に応じたロボットシステムを開発・提供している。
  • サイバーフィジカルシステムは、現場をそのままサイバー空間上に再現し、このサイバー空間上でロボットシステムを導入してみて、使い勝手や効率などをシミュレーションする仕組みだ。事前のシミュレーションにより適切なロボットシステムを導入できる。
  • HCIが順調に人を採用できている要因は社員第一主義であること。そして夢を叶えられる企業であることを訴えているからではないだろうか。自分の夢と会社の夢が同じ方向を向いているのなら、ここでがんばろうという若者はいるはずだ。
  • HCIが着実に成果を上げてこられた要因はトップがブレずに未来の指針を提示して、社員みんなが同じベクトルで進んでいるから。世の中の問題をロボットで救うために、HCIの活躍できる場はたくさんあると考えている。

企業情報

会社名株式会社HCI
本社所在地〒595-0021 大阪府泉大津市東豊中町3-14-10
創立年月日2002年(平成14年)6月26日
資本金20,000,000円
従業員数55名
WEBサイトhttps://www.hci-ltd.co.jp/

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