DX関連

DXに関連する様々な情報を
掲載しています

  1. HOME
  2. ブログ
  3. AI
  4. 《イベント開催レポート》生成AI導入実践ワークショップ

《イベント開催レポート》生成AI導入実践ワークショップ

 一般財団法人関西情報センター(KIIS)では、2024年7月2日・9日・30日の計3回にわたり、「生成AI導入実践ワークショップ」を開催しました。立場の異なる社員同士が意見を交わしながら真剣に取り組む光景が見られ、大変盛り上がり充実した3日間となりました。

■ 本イベントの概要

 本ワークショップでは、企業の「新規事業開発」を題材に生成AIを活用する方法を学びました。概要を学ぶだけでなく、全3回のワークショップで得られた成果を持ち帰って実際に事業に生かす実践的なところまで到達することを最終的なゴールにし、ただ聞く/知るだけではなく、生成AIを活用して新規事業創出に繋げることを目的としました。

 また、これまで生成AIの事業活用に着手してきた企業がぶつかってきた大きな課題の1つには、経営者・現場のいずれかが推進しようとしたものの双方の目線が合っておらず、時間と労力がかかりすぎてしまい頓挫してしまうことが挙げられます。事業に活かすためには経営者・現場の双方の目線が合っていることが重要です。
 この課題を解決するため、1社あたり2名以上(複数名)の方に参加いただくことを参加条件にし、立場の異なる双方の視点をワークショップの場ですり合わせ、視点を合わせながら生成AIを活用した新規事業創出に繋げるようにしました。かつ参加社数を10社までに限定し、講師との距離が近く密度の濃いイベントといたしました。結果的に10社25名の方にご参加いただきました。

 今回講師には、株式会社01START 代表取締役社長 芝先 恵介 氏・株式会社01START 村中 督史 氏をお招きし、全3回にわたるワークショップで辣腕をふるっていただきました。講師の芝先様は、スタートアップや大企業の新規事業立ち上げ支援に尽力されており、大学等のマーケティング・経営戦略の非常勤講師や公益財団法人大阪産業局 あきない経営サポーター、DXアドバイザー、独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザーとしても活躍されています。株式会社01STARTを設立し、経営理論にも精通されたお立場から、新規事業開発や営業DXのコンサルティング、生成AIに関するセミナーに数多く登壇されておられます。本イベントでは、そのご経験を存分に発揮頂きました。

■ 第1回|7月2日(火)実施報告

 7月2日(火)の第1回は、「そもそも生成AIとはなにか?」「生成AIを活用したツールにはどのようなものがあるか」を中心に、ChatGPTを用いてプロンプトエンジニアリングの実践を行いました。

 ChatGPTから求める回答を返してもらうためには、人間同士ででいうところのコミュニケーションスキルのようなものがChatGPTに対しても必要で、指示の与え方にコツがある点を解説頂きました。
 ChatGPTに指示を与えるパートでは、プロンプトエンジニアリングを活用して受講者が自身のPCを用いて実際に入力し、ChatGPTが返してくる答えを見ながら”対話”するコツを学びました。始めは上手くいかず求める答えが返ってこない方が多かったものの、講師から提供されたサンプルプロンプトをもとにChatGPTへの指示の出し方を工夫したところ、誰でもすぐに結果を得ることができ、会場からは感嘆の声が上がるほどでした。最終的には、サンプルプロンプトを元にChatGPTに指示を出すコツを掴んだ受講者の皆様が求める回答に近い指示を与えられるようになっておられ、限られた時間内で使いこなし始めるようになっている様子を見ることができました。  

 第1回終了後は当財団会議室にて、飲み物・お菓子等を片手にネットワーキングを行いました。先のワークショップで対応することができなかった質問内容なども含め、終了時間ぎりぎりまで多くの方に講師等登壇者との交流を深めていただきました。

■ 第2回|7月9日(火)実施報告

 7月9日(火)の第2回では、第1回終了後に出された課題を発表いただいたあと、第1回で学んだプロンプトエンジニアリングを用いて「アイデア発想」と「調査分析」を行いました。

 良いビジネスアイデアとは「課題の質を高める」のちに「ソリューションの質を高める」プロセスが必要で、逆順で「ソリューションの質を高める」のちに「課題の質を高める」プロセスは存在しないことを学びました。そしてChatGPTを用いて出されたアイデアを元に、PEST分析や5S分析等の調査分析を行い、出されたアイデアをChatGPTを用いてさらにふるいにかけました。

 「アイデア発想」「調査分析」において、ChatGPTを用いたプロンプト実践を繰り返すうち、効率的に多くのアイデアを得られました。一方で得られたアイデアの中から良いものを抽出するには、ChatGPTが持ちえない「自分しか知らない秘密」(例えば高い専門性・環境変化の理解など)がとても大切であり、情報を掬い取り選び取るスキルがより問われることを体感しておられました。同じ業界・業種であっても、選び取る情報が異なることが面白く、ワークショップ終了後には一緒に参加された同僚と場所を移動して引き続き議論される光景も見られました。

■ 第3回|7月30日(火)実施報告

 7/30(火)の第3回では、まず第1回・第2回を通じて学んだペルソナ(※1)と共感マップの作成についておさらいしたうえで、「課題の質を高める=顧客の解像度を高める」必要性について理解を深めました。その後、第2回終了後から第3回までの3週間でリーンキャンバス(※2)にまとめてきていただいたビジネスプランを発表いただきました。

 本イベントは1社あたり2名以上の参加を必須条件としたことにより、持ち寄ったリーンキャンバスの内容やペルソナ、課題にアプローチする角度は多様で、同じ企業に勤める社員同士で「そういう視点もあるのか」「なるほどそれならすぐに活用できそう」のような、お互いの考えを認め合い建設的な話し合いが行われていたことが印象的でした。

 ChatGPTを活用した新規事業開発において、あくまでも既存のアイデアの掛け合わせから生まれるものであることを前提にしたうえで、課題の質を高めることによって今まで漠然としたアイデアしか生まれなかった場面で現実性の高いアイデアが多く発表されました。
 ほとんどの参加者が、現状の自社ビジネスに関連したテーマで新規事業を企画しておられました。いずれの企画も、このあと持ち帰ってすぐに活用できるアイデアばかりでした。また、企画に要した作業時間も、講師から提供されたサンプルプロンプトを活用した結果、かなりの時短に成功したことを強く実感しました。質の良いアイデアであるだけでなく、アイデアを生むまでの人的コストや時間効率が大変上がっておられた点が印象的でした。

(※1)ペルソナとは:
カール・グスタフ・ユングの概念から転じて、マーケティングに商品やサービスを提供する際、主にどのような顧客に向けたものであるか、その具体的な人物像を設定することです。 性別や年齢層だけでなく、生い立ちや学歴、職歴、年収、ライフスタイル、家族構成、趣味嗜好、特技、価値観など、あらゆる属性を設定します。

(※2)リーンキャンバスとは:
ビジネスモデルを考えるためのフレームワークの一つである「ビジネスモデル・キャンバス」をアレンジして、特にスタートアップや新規事業において必要な9つのビジネスの要素を1枚の用紙に表したものです。「Running Lean 実践リーンスタートアップ」の著者で起業家のアッシュ・マウリャが提唱しました。

■ 全体所感

 イベント全体を通じ和やかな雰囲気でありながら、ワークショップが進むにつれてどんどん真剣になっていく様子が見てとれました。1社あたり2名以上で参加いただいたことにより、その場で議論が白熱し、立場が違っても自社のビジネスをより発展させたい同じ目的のために知恵を絞り意見を交わす様子が何度も見られました。また、他の方の発表内容を聞くことを通じ、「これは自社のビジネスにも使えそう」「そういう発想があったのか」など、刺激を受け合いながら聞いておられる様子が印象的でした。

 参加者アンケートでも、「新規事業の創出及びAIプロンプトの活用の両面から濃い指導を受けられ、参加して本当によかった」「参加して終わりではなく、ここからが勝負だと思う。得られた成果を持ち帰り、実際に活用するフェーズまでこだわって進めたい」など、たくさんのお言葉をいただきました。

 講師からも「各社2名以上でご参加いただき、いつも以上に真剣な姿勢で臨んでいただいた。ただ聴講する・体験するだけに留まらず、全3回を通じて持ち帰りどう実践・活用するか具体的な案を持って帰って頂けてよかった」とのことでした。

 参加者同士でのコミュニケーションが多く生まれ、今後生成AIを活用するにあたって複数名が同時に参加することの意義を感じ、事務局が想像していた以上に成果の多いイベントになりました。参加者の熱量をじかに感じられる点やコミュニケーションの楽しさ、新たなネットワークの構築等、対面イベントであればこそ得られるものがたくさんあったように思います。参加企業が今後どのような取り組みを具体的に進めていくかについても適宜追いかけ、参考となる事例があればまたご紹介いたします。

 KIISでは引き続きDX・AI・サイバーセキュリティ等、様々なイベントを実施してまいります。本イベント含め、引き続き様々な活動にご協力いただけますと幸いです。


■ 開催概要

日時:    (第1回)2024年7月 2日(火) 15:00-17:00
(第2回)2024年7月 9日(火) 15:00-17:00
(第3回)2024年7月30日(火) 15:00-17:00
場所:松下IMPビル2階 貸会議室
主催: 一般財団法人関西情報センター(KIIS)
講師:株式会社01START 代表取締役 芝先 恵介 氏
株式会社01START       村中 督史 氏
https://01start.co.jp/

(以上)

関連記事